空飛ぶタイヤ

観に行きました。観終わった感想がタイトルです。


少しネタバレ有りの感想です。


ちょっと思ったのがシンゴジラっぽいなと思いました。
どこがって、ホープ自動車に赤松が連絡を入れる時の、会社内の電話シーンが。シンゴジラと被るとこは無いんですけど、雰囲気がね。
車の欠陥について本社に問い合わせるにしたって、そうか販売社から本社のしかも奥まで伝えるって大変なことだなぁって思ったり。
CMだと赤松VS巨大企業、ですが、実際には赤松VS巨大企業、販売部&品証部内の人間VS品証部、銀行内の一部の人間VS巨大企業、記者VS巨大企業、そこに警察も介入してという、という風にいくつか分かれていて、そこの重厚さが面白かったです。
会社内での部の序列の高低さとか。実際そういうことあるのかなぁとか。


自分の中で面白い映画っていうのはオープニングと、エンディングで決めています。曲も含めて。
今回はキャッチボールと、職員のリストラの問題から始まります。
長瀬さん演じる赤松社長は、会社に余裕は無くても若手をしっかり育てていきたい気持ちがあって、従業員とその家族を護る!と豪語。
仕事の進め方について具体的なこと言わずに何を熱血で青臭い言ってんだこの社長、というのが第一印象。
でもこのセリフが後で効いてくる。

エンディングはサザン。ラジオで聴いたときは、これは映画に合うのかと思ったら、ばっちり合ってました。
赤松側が勝って、明るく終わるでもなく、被害者のこともあるからしんみり終わるでもなく。
ただただ、戦う人たちを応援するという雰囲気の歌。アジアっぽいところもあって。良かったです。



長瀬さんは中小企業の社長さんに全然見えないんですよ。それは私の勝手な偏見なんですけど。
スタイル抜群で顔小さくて、若さもあって。でもその社長としてなりきれない感が、ストーリーの流れにも合っていてよかったです。
親から仕事を継いでいるという設定、こんな社長で…と悩むシーンなど。まだまだ見た目は若造で銀行との交渉もうまく出来ないでいる、でも間違ったことは素直に謝るし自分の家族が従業員への思いやりもある人物像は長瀬さんで合ってたなと思いました。
実際、地元の車の販売部や整備士で格好良い人結構いるので、ディーンさんとかの配役は気にならなかったです。

あと主人公とはいえ、物凄く特別な発想をして行動することはしていないんですよね。周りに助けられ支えられ、情報をもらってとにかく敵陣に乗り込む。そこに頭脳戦は特にない。

相手との駆け引き戦、情報収集戦は、ホープ自動車ホープ銀行で行われていることが多かった印象があります。
ディーンさんとムロツヨシさん達との会話シーンはずっと見ていたかったくらい面白かったです。
ディーンさん演じる沢田が自分の出世を選んで、それを仲間はちょっとはなじるけども、縁を切ることはしない。それはお互いが立場を知っているから心の底から嫌うってことはないんだろうなって。

銀行側では、高橋一生さん演じる井崎が、不穏な空気を察してホープへの融資を断ろうとしているときに上司がそれを護ってくれるんですが、その上司は結果的に出世したみたいなシーンもあったり。
そういう勧善懲悪なところを感じました。
高橋さん演じる井崎のシーンは数箇所で、多くはないんですが存在感ありました。
赤松や沢田とも面識なく終わるんですけど、実は裏で色々やっていました感があってかっこよかったです。あと、上司とのシーンでの井崎が可愛い。

記者役の小池さん、赤松の妻役の深田さんもよかったです。
夫を支えるということで、夫婦の温かいシーンというよりも割とサッパリした演出になっていて、映画の中の割合として短すぎず長すぎず丁度よかったです。


他、良かったところ。

くすっと笑える部分がいくつかありました。
実在したんだな。
大企業なめんな。
ご祝儀返せ。
とか。


事件解決に向けて、とにかく地道に進んでいくところ。ひとつひとつ会社を当たって、何か手がかりは無いかと探していく。
と同時に、社長が事件にこだわればこだわるほど、会社の経営は大変になるわけで。
綺麗事だけで済まない。でも綺麗事も大事。そこが良かったです。

被害者のお子さんの絵の出し方。もうよくあるのが、子供の絵が出てきてそれに調査側が涙するという、超古典的な演出。
今回もそれが出てくるんですが、四十七日の供養の時に作った冊子という出し方というのがうまいなぁって思いました。
これだと、パンフレット感覚で子供が渡しても不自然さがない。あと事故からそれだけ日数が経ってることも示せる。そこがうまいなぁって思いました。
被害者がまず第一という精神。男たちの会話劇、戦いが格好良いけれども、そこにはちゃんと「人一人死んでるんだ」と被害者の存在が出てきます。
最後の最後まで。刑事が取り調べの時に「死に顔を見た。お前に見せてやりたかった」というようなシーンがあって、グッときました。


最後の方で赤松が差し出した最後の1手。それにぞくっとしました。新車だったんです、って。それは整備のせいにできないよねって。

結局、赤松は最後はほぼ諦めに入っているけども、積み重ねてきた情報戦は無駄ではなく、最後は若干人の良心が勝った的な感じで終わりました。

そして映画のラストシーン。ここで赤松と沢田が何を話すのか。
そうきたか!って思いました。
良い終わり方でした。
青空というよりも少し曇った空というのもよかったです。