未来のミライ

レビューでは酷評の嵐で、そこまで言うならどんなストーリーなんだ?というとても不純な動機で観に行ってきましたが、思っていたよりもよかったです。
いや、面白かったですよ。くんちゃんが妹を両親に取られてしまう(ように感じる)シーンなんて笑ってしまいました。
スタイリッシュなクレヨンしんちゃんって感じです。


お菓子を拾うシーンでは、トトロ。戦闘機のエンジンシーンでは紅の豚のオマージュかな、と思いました。


で、噂通り、くんちゃんの声は「これはわざとか?」と思うほど合っていなかったです。4歳児の声ではない。アニメ声過ぎるのも嫌ですが、これは酷い。下手とかそういう次元の話ではなく、演技は上手くても子供の声ではないから違和感がすごい。
なんですけど、そもそも、くんちゃんも両親も若き頃の曽祖父の声もほっとんど絵柄と合っていないので、中盤には違和感なくなりました。
あとでスタッフロール見たらプロの声優ではなかったので納得。
「声」と「絵」が離れていて、ずーっと浮遊感がある。これはおおかみこども〜の時もそうだったし、サマーウォーズの時もそうだった。
だから声優と絵が合っていないのは、ある意味細田作品の特徴かもしれません(バケモノの子は観ていない)。


深読みすると結構面白いです。ツッコミどころはありますが。子育てと仕事で大変な時に、あんな手のこんだパンケーキ焼けるのか?とか。階段危なくない?特に玄関に向かっての長い階段に対しては、子供用の柵を付けた方がいいんじゃないかとか。
でも、あの上がったり下がったり、生活しにくそうなあの階段の設定は、まるで感情の起伏が激しいくんちゃんそのものや、少し進んでは後に下がってまた進むくんちゃんの成長を表現しているのかなとも思いました。


同じ空間に二人の同一人物が居てはならないというルールが、ラストの方では何でくんちゃんに適用されないのか。については、あの駅のシーンは精神世界に近いから、なのかなぁと思ったり。
未来の家に行ったときも、物陰から観ている分には大丈夫とか。


「未来」の名前の発想はあまりにもこじつけでした。くんちゃんに「どんな名前がいい?」って聞いて「のぞみ」「つばめ」(これは後々効いてくるけど)と答えてもらったんだから、せめて「のぞみ」から何かもじって付けてあげればいいのにと思ってしまいました。


未来のミライが蝶と共に現れたり(蝶は異世界の案内人というイメージがある)、魚と一緒に現れたり、という演出は好きです。燕が過去を案内するところとか。夏の鳥、燕。この季節にぴったりだなと。


くんちゃんから見える映像、過去との行き来、それはどこまで「現実」なのか子供目線だから誇大した映像になっているのか。その辺りの曖昧さがよかったです。


セリフがいちいち説明セリフなのは気になりました。


そんなに悪い映画じゃないんですけど、テーマが渋滞したのがよくないのかも。
くんちゃんが兄として成長する話にしたかったのか、子供目線の世界は面白いんだよ〜っていうのを強調したかったのか、家族の歴史は人もペットも小さな積み重ねで今に繋がっていてくんちゃんもまた誰かに繋がっていくんだよってことを話したかったのか。
あれも言いたい、これも言いたい、っていうのが重なってしまったのが残念。
くんちゃん兄になる奮闘記でよかったんじゃないかと。
東京駅での遺失物係とのやりとりは名シーンだと思うし、駅の迷路感とか格好よくてあそこもっと見たかったです。
あと多分イヌカレーだと思うんだけど。かっこよかった〜。
黒い新幹線は、迷子の子供が乗るものらしいのですが、その「迷子」が単なる迷子を指すのか、自分自身を見失っている子を指しているのか、それによって考え方変わるなぁって思いました。
単なる迷子なら、犯罪に巻き込まれるという意味での「黒新幹線」。自分自身を〜の方は、周りからの・周りへの愛情に気がつかずに生きていく孤独をを意味するものなのか。

妹を助けるシーンは素直に感動出来ました。

あそこでスっと家に帰ればよかったのに。
家族の歴史を辿り出したのですが、別に悪いシーンじゃないんだけど「これ要る?この映画のテーマとして」っていうシーンでした。


筋が通っているか通っていないかでいえば「君の名は」よりは良かったです。


個人的には細田監督の絵柄や演出を見ていると、現実の人間世界でファンタジーを描く映画よりも、がっつりファンタジーでアドベンチャーな世界を見てみたいと思いました。