人間失格

一つ一つのシーンは美しいです。
どこを切り取っても絵になるような映画。

そうだなぁ、「映画」を観に行くというよりも「美術館」に行く気分で観るといいかもしれません。
ところところぶつ切りで、美しいシーンだけを撮りだして載せているような印象を受けたんで。

あ、あと、原作は読んだ方がいいと思います。その方が分かりやすいです。時代背景や葉蔵の育った土地のこととか少し知っておいた方がいい。
ただ読み終わった後は酷く落ち込みますがね。

原作読んでいれば分かることなんですけど、ほっとんどのシーンに葉蔵扮する生田さんが出演しています(苦笑)
ちょっと胸焼けするほど。
生田斗真のPVか?」と思いましたが、そもそも原作が葉蔵視点で描かれているんだから仕方ないというね。

撮影の順序は分かりませんが、後半にいくにつれてお話に入り込みます。

ただ、津軽にて世話係の鉄と一緒に寝るシーンはちょっと分かりにくい。
薄い白地の着物を着た鉄の横で全裸の葉蔵が体を丸めて寝ているという。

そこのシーンいるか?と思った。でも監督にとっては意味があるんでしょうね。


好きなシーンは、今回宣伝に全く関与していないV6の森田剛さん扮する中原中也と、葉蔵が鎌倉に行くシーン。
トンネルのような場所で、天井から落ちてくる雫が、まるで命燃え尽きそうな線香花火のようにパチパチと音を鳴らす。
その後、2人で、散りゆく花吹雪を一緒に見つめる。

このシーンは中也の死を予感させて、とても切ないシーンでした。

森田さんの表情もすっごく良かった。タイトルの意外な掘り出し物とは、この森田さんのこと。
こんな表情するんだと驚きでした。あと大人の色気や哀愁があります。
本編後に流れるクレジットには「森田剛」とだけ書かれていて、「V6」とは記されていません。だから知らない人が見たら、どこかの役者さんだと思っているのでは?

ヒラメ役の石橋蓮司さんも良かったです。っていうかこの人が居なかったらこの映画自体成り立っていない気がする。
ストーリーが淡々とし過ぎている時に、スパイスとしてすっごくイイんです。
脳病院で「女のいないところに行きたい」という葉蔵を笑い飛ばすシーンとか、葉蔵が父か兄に送った無心の手紙を葉蔵に素っ気なくバサッと返すところとか。

もう一つ好きなシーンはラスト。葉蔵が、療養のために兄から紹介された津軽から、鉄を残して抜け出し、雪の中汽車に乗り東京へ向かうシーン。
気付くと、周りには今まで自分が会ってきた人間達が乗っている。

列車というのは時に人生に例えられるけど、まさにそんな感じ。

この演出がとても良かったです。