舞台内容ネタバレ

以下、ネタバレです。


そもそもどんなお話だったのか。
それを書いていきたいと思います(自分自身のメモも含めて。少し違っている部分もあるかも)。

優等生の弟“達也”と、15歳年上のダメ兄貴“直樹”。直樹は医者の道を、家族に期待されるが、大学受験に失敗しまくり、麻雀に嵌り、やっと合格したマイナー大学に行くも、シンガーソングライターを目指して実家に帰ってきてしまう(父親にお金をせびりに)。
達也が中学生のとき、あることがキッカケで、直樹は父親“勲”(久保酎吉)に勘当されて再び東京へ。
その後すぐに母親が亡くなり、父親は酒びたりの生活。そして医者をやめて農業の道へ。
達也も全寮制の高校へ進学、そして東京の大学へ。
それから7年後
ある日、父親から「チチ ヤバシ スグカエレ」と電報が送られてくる。
急いで帰った達也が見たのは、女装した直樹と、そんな直樹にお酌してもらってニコニコ顔の父親。しかも農業が大成功してお金には余裕がある状態。
そして、直樹と達也は、父親から30歳年下の婚約者である“森沢香織”(朝海ひかる)を紹介される。

あらすじでは、この騒動をキッカケに「兄弟は歩み寄って行く」とありましたが、歩み寄るというよりは、この騒動がキッカケでお互いの内面が明らかになっていって、兄弟が少し成長していく。そんなお話のように感じました。

深野達也(加藤成亮

主人公。小さな頃から優等生。母親が事故死するまでは兄の直樹を慕っていて、ギターを教えてもらった思い出を心の底で大切にしている(7年振りの再会でちょっとずつ思い出していく)。
直樹と距離を置くキッカケは母親の死。

大学を中退して(確か中退だったような)シンガーソングライターを目指して実家にもどってきた直樹が、ある日、隣街の美女コンテストに女装で参加してそれが新聞に載ってしまった。父親は大激怒。
大喧嘩して父親に勘当された直樹は達也の制止を振り切って家を飛び出す。

それからまもなくして、達也の母親が事故死してしまう。友人の警官“野口健一”(久ヶ沢徹)から「お前の母親がこれを握り締めていた」と、あるメモを達也にこっそり渡す。そのメモには「恥ずかしくて生きていけない こんな私を許して」と書かれており、母親が直樹の美女コンテスト出場が原因で自殺したと思い、ショックを受ける。

このことがキッカケで、達也は女性と話をすることが出来ない体質になってしまう。
大学の法学部で優秀だった達也も、女性と話が出来ないために就職もままらない。
そして、思考錯誤を重ねた上、ある方法を取れば女性と話せることが判明する。

女装している間だけは女性と話が出来る。

しかし女装しないと話が出来ないため、父親の農業を継ごうと漫然と考えていた。
女装しながらお店でバイトもしていた達也は、カウンセラーの女性(内田亜希子)の名を借りて“富永麻衣”として“女性”として働いていた。そんな達也を女性だと思い込んでいた、ある客・金貸しの“梶田伸治”(中川智明)が惚れてしまって達也の自宅まで来てしまうハプニングが起きてしまう。“麻衣”が“達也”のアパートに入ったのを確認した筈なのに5日も“麻衣”が出てこない。もしや監禁?と考えた梶田は深野家に来ることになる。

深野直樹(城島茂

達也の15歳年上の兄。何をやってもダメ。ぶざまで滑稽。
ギターはそこそこ弾ける。作る曲は失恋の曲ばっかりで、マイナーコードが好き。
実は、直樹の本当の母親は勲の妾(同じ街に住んでいる)。達也とは腹違いの兄弟で、どうやら直樹本人は大分前から知っていた様子。達也は中学生くらいの時にその事実を野口から知らされる(街では有名)。
直樹の母親には娘が1人居たが、ある日とあることがキッカケで達也が「この街を出て行ってください!」と怒鳴りこんで、その翌日に街を出てしまった。
実の母親はそれから数年後に亡くなってしまう。

で、父親に勘当されて家を飛び出したその夜、実家のお金を漁りに家にこっそり戻った直樹は、育ての母親(達也の母親)に見つかってしまう。
そして、母親に「血は繋がっていないけれど本当の息子だと思っている」的なことを言われ、へそくりのお金を渡される。
そして、直樹がCDを出す予定だという曲のタイトルを教えて欲しいと言い、母親はタイトルをメモに書いた。

そのタイトルは、1曲目が「恥ずかしくて生きていけない」2曲目が「こんな私を許して」。

これを、達也は誤解していて、再会したばかりの兄にも言えず、心の傷になっていた。

また、7年振りに深野家にもどってきた直樹は父親の遺産に異様な執着を見せる。
通帳を盗んで銀行から引き落とそうとしたり、香織を「遺産狙いの結婚」と疑ったり。

実は、東京で世話になった人の会社がつぶれかけていて、それを助けるためにお金を集めようと奔走していた(で、梶田に実家を担保にどれだけお金になるか相談していた)。

森沢香織(朝海ひかる

母親が入院中に亡くなり、落ち込んで病院の外のベンチに座っているとき、突然に勲から「結婚してください」とプロポーズを受ける。
3日ほどデートをして、香織は勲との結婚を決める。

この香織の母親というのが、勲の妾で、つまりは直樹の母親。香織は、直樹の妹にあたる(多分、香織の父親は勲とは別の男性)。

また、直樹と香織は初対面では無くて、元恋人同士で付き合っていた。
しかし達也の怒鳴りこみがキッカケで、香織は直樹には別れを告げずに黙って母親と街を出てしまう。
そして、数年後、深野家で再会することとなる。
(ちなみに直樹は、後に香織から、香織が自分の妹であることを知らされてショックを受ける)

生前、香織(と直樹)の母親は「男運は悪かったが勲さんだけは違った」と話しており、母親が愛した勲に興味は持っていた。

色々な騒動の後、香織は勲と結婚。勲が亡くなり、葬式で喪主を務めた後、忽然と姿を消した。
銀行に保管していた勲の財産の現金1千万を持って。

深野勲(久保酎吉)

直樹、達也の父親。香織の母親が付き合っていた相手で、その後、香織と結婚し、新婚旅行の翌日に他界する。
北関東の田舎の開業医で、患者のほとんどは高齢で診察代もなかなか出せないため、“ツケ”にしていた。
妻の死をキッカケに、医者をやめて農業の道に進む。これが大成功。
しかし、友人の連帯保証金になり莫大な借金を負ってしまう。その金額は、遺産の2倍。
そんなある時に余命1ヶ月と診断されて、入院先で出会った香織にプロポーズして婚約する。

そんな勲は、遺書に「直樹、達也には遺産の相続権利を放棄させる」と記していた。
借金を相続させないために。


色々あった後、過去の誤解が解けて女装をしなくても達也は香織とカウンセラーの富永麻衣とは話が出来るようになったが、まだこの二人だけ。「農業がやりたくなった」と麻衣はカウンセラーを辞めて、深野家に同居。
達也、直樹、麻衣の3人の生活が始まっていく。


こんなお話でした。

麻衣は、達也の恋人なのかと思っていたら実はカウンセラーで。
香織は“謎の女性”かと思ったら、実は直樹と昔付き合っていて、二人は顔見知り。しかも兄妹だったっていう。


直樹と達也は腹違いの兄弟だけど、お互いそれは気にしておらず、達也も「母さん(達也の母親)の気持ちを考えろよ!」と直樹に怒鳴る場面もあり、お互いの“母親”は同じであると無意識ながら思っているところがちょっとぐっときた。


あと、なぜ勲は香織と結婚したのか。
香織は結局お金目当てだったのか。
通帳に入っていたお金を「現金で見たい」と勲にねだったのは、香織。

でもねだらなくても勲は現金にして金庫に残したのかもしれない。

借金を継がせずに、でもお金を残してやるための裏ワザだったのかもしれない。

自分の恋人の娘に、少しでも何かしてやりたくて取った行動だったのか。


ほどよく謎が残る辺りが面白かったです。6月のビターオレンジ