闇金ウシジマくん」と「るろうに剣心」のネタバレあり。ご注意を。

闇金ウシジマくん

まずは昨夜観たこの映画の感想から。
原作は知らないです。面白かったな。大島さんはミスキャストかな。美人っていう設定だけど、とてもそうは思えない。吉高さんとか仲さんがやればよかったような…。
闇金のシーンでは、もっと壮絶な取り立てがあるかと思ったらそこは抑え目で。でもその理由もちゃんと劇中で説明してたし、納得。
闇金がどういうものなのか説明もあったし、闇金の怖さを伝えるには良い映画かと。
ジュンの危機回避の仕方には感動すら覚えました。小物に見えて、ここまで上り詰めただけあって頭の回転早いよね。

内容はよかったけれども、ラストの蛇足シーンが気になった。わざわざ描く意味が分からない。

スタッフーロールのキャストのところにお金のこと書いてたり、闇金相談所のお知らせが載っていたのには笑いました。

るろうに剣心

感想、かなり長いです。


結論を言えば、良かったです。るろうに剣心を実写化するなら、これしかやりようがないんじゃないか。脚本もキャストも。

るろ剣は私の青春だった。漫画は全巻持ってる、その後の番外編も含めて全部読んだ。アニメもTV版もOVAも映画も全部観た。
学生の頃はセリフを書き写したり、イラスト描いたり、同人誌くずれの文章書いたり、友達が持ってきてくれた模造刀で遊んだり、色々やったなぁ。

映画は、勿論ツッコミ所もあるんですけど、それは後で述べるとして。
るろ剣という作品の根本にあるテーマをこれでもかと大切にしていて。偉そうなこと言えば「合格」です。
実写化には大反対だったけれど、これなら大丈夫だと言える実写化でした。

まず脚本。よくまとめたな、こんなカオスなものを(笑)
今回の実写化は、原作にある「比留間兄弟の事件」「刃衛との戦い」「左之助との戦い」「武田観柳の事件」「幕末時代」「十字傷の元である、清里との戦い」の6つのエピソードが元になってます。
清里出してくれたのは嬉しかった!
原作と違うのは「比留間の代わりに、観柳の手下ってことにしている点」「左之助との戦いでは、赤報隊のことは語られず。剣心に強い恨みがあるわけではない」「観柳邸には蒼紫たちはいない。代わりに外印、番神がいる」、あとは「天誅」の代わりに「斬奸状」だったというとこかな、主に。

登場する人物たちは皆それぞれ背景に色々抱えている。
剣心、斉藤、薫、弥彦、左之助、恵、刃衛、観柳などなど。そんな彼らの関係性を成立させなきゃいけない。
不殺を否定する斉藤。剣心に惹かれる薫。「人を活かす剣」を目指す薫に惹かれる剣心。何だかんだで薫や剣心を慕う弥彦。左之助が仲間になる過程。
…ややこしい!(苦笑)

恵と観柳のエピソードと神谷道場をつなげるのは難しくはないと思うんですよ、
でもその前に、薫・剣心・弥彦が心を通わせなきゃいけない。2時間の映画の中でw
しかもそれに刃衛も絡ませなきゃいけない。どうすんのかなと思ったら冒頭に出すっていうね。ああ、なるほど、こういうやり方があったのかって思った。
道場での一戦は、原作通りにやるとそこでエピソードが一旦切れてしまう(「拙者も旅に疲れた」っていうシーン)。でも警官がやってきて剣心を連行して、薫と引き離して、剣心が斉藤・山縣と再会して、牢屋で剣心と左之の出会いのくだりをやって、その後に薫が剣心を迎えに行くことで、恵とのエピソードに自然に流れが繋がってた。

どのキャラのどのエピソードをどこまで掘り下げるのか?
それとも今回はエピソードをカットするのか。

そのバランスが凄く良かったと思う。
私だったら左之助赤報隊の話を入れたくなっちゃうけど、そこはバッサリカットしてある。でもそれでも左之の持つ魅力は落ちてなかったのが凄い。

オリジナルキャラに近い外印(般若がちょっと混じってる?)や番神を出すくらいなら、蒼紫たち御庭番衆出せばいいのにと思ったものの、蒼紫たち出すと収拾がつかなくなるし、アニメ感が強くなってしまう。
それと観柳→刃衛への戦いの流れを作るためには蒼紫たちを出さないで正解だったかな。

キャストについて。
剣心は、期待通りでした。いい!やっぱり佐藤健さんで良かった!
抜刀斎時代の冷酷さとか、清里の死体を見ている時の死んだような目つきとか、剣心の時の穏やかな目とか。演技分け完璧。
性格は、原作よりもやや寡黙。原作って、口八丁と言われているように結構喋ってるんだよね、剣心って。映画では抑え目で、かえって良かったです。
あと、剣心に求めるものって、飄々さ、そして可愛さが大事だと思ってるんで(いや真面目に)。
牢屋で雨をしのごうとする姿とか、左之と背中合わせになってるシーンとか、可愛い。
刀持ってないときは、女よりも可愛くて守りたくなるくらいの気持ちになるようなキャラ。でも刀持つと豹変する2面性。

るろ剣を実写化するにあたって、剣心の見た目が一番の難関だと思う。って誰しも思うことだろうね。
漫画だからあんまり違和感もたなかったけど、コミケのコスプレ見ると、赤い髪とか現代っぽい髪形とか赤い着物とか、やっぱり変。十字傷も実写化するとやっぱり変。
抜刀斎の素性を隠してんのに、何でこの人、この時代にこんな派手な着物着てるの?趣味?って思っちゃう。
だから、最初は地味な色の着物で登場して、その後に薫に赤い着物を借りるっていう流れは、上手いなーって思った。
傷もギリギリの存在感で残してました。

飛天御剣流の「一対多数を得意とする古流剣術」の説明も、やっぱりあると空気が違うね。これ言っておくことで、剣心が何で多数の相手を倒すことが出来るのか?っていう説明になる。剣心が何で強いのか説明になってる。別に天才とかじゃなくて、そういう流派を学んでいるからだよ、と。
技の説明とかどうすんのかと思ったら、双龍閃だけ説明。言わないけど龍つい閃や、土龍閃的なものを繰り出してた気がするけど。技を叫ばなくてよかったよ。でもね、双龍閃が若干分かりづらかった(苦)
いや、知ってる人は二撃目の鞘がくる注意して観ることができるんだけど。あそこ勿体なかったなー。スローモーション&心の声入れた方が良かったと思う。

薫は、キャスト発表の時には「またここにもゴリ押しの武井咲かい。出過ぎ!」って心底思いましたけど。
結果的に武井さんで良かったです。
出過ぎとはいえ、まだまだ新人女優さんだしバラエティでもあんまり見ないし、武井さんがどういう人かよく知らないから、個人的には色がまだ無くて見やすかった。
今となってみればAKBじゃなくて良かった…と心底思うのは私だけでしょうか(ウシジマくんの大島さんの見た目や演技があまりのもアレだったから尚更ね…)。
瞳が細い狐目の印象があったんだよね。でも映画で観たら、割と瞳が大きかったのが意外だった。「あれ?CMで見るよりも可愛いじゃん」って。髪形の所為もあるのか、普段メディアで見るよりも可愛かったです。
トレードマークの大きなリボンをしなかったのも良い判断かと。他のキャラもそうだけど、アニメ的な要素を上手く抑えて現実感を出していた。
最初のシーンは「これ大丈夫か?」だった。でも、観柳の手先と「土足で上がらないで!」などと言い合うあのシーンからは凄く良かった。
剣心に「行こ」って言うセリフは変だったな。あれは「行きましょう」だと思う。
ちなみに映画の裏話として、刃衛に石段から突き飛ばされてごろごろ転がるシーンはスタントを使う予定だったのに、本番では急に自分から飛び込んだそうです。手が後ろで縛られているから、顔から突っ込む可能性があるのにね。素直に凄いと思った。
ただ、心の一方で苦しんでるシーンではよだれくらいは出して欲しかったな。

弥彦。弥彦と薫の関係性をどう説明するのかと思ったら、「孤児」「士族」って言わせることで案外すんなりと物語に入ってました。観柳も最初の方で「明治なって士族は落ちぶれて…」みたいなことを斉藤に説明しているから、こういうのが良い伏線になってる。
観柳というキャラが、この明治の裏も表も表わしていて「この時代はこういう感じなんですよ」って説明してくれていたと思う。

っていうかこの映画は、説明しなきゃいけないことが山ほどあるのに、うまーく説明口調にならないで説明してたね。

恵は、ちゃんと恵でした。蒼井優さん凄い。可愛らしいイメージが強い女優さんですが、こんな色っぽい女性を演じることも出来るんですね。

左之助がどうやって仲間になるのかが一番疑問でしたが、なるほどね〜っていう。
左之が剣心との戦いをすぐに止めたり、一緒に観柳邸へ向かう動機や過程が、ちょっと急な気もしたんだけど。
勿論伏線はある。
左之と赤べこの人たちが顔見知りだったり、喧嘩自体が町ではそこそこ受け入れられてるし(江戸っ子は火事や喧嘩が好きっていうくらいだし)多分喧嘩屋の存在も知られていそう、左之が剣心に強い恨みは抱いてはいない(映画ではそういう設定?)。
あとは左之が金目当てで剣心に戦いを申し込んだけれども、剣心は左之がそういう人間じゃないことを見抜いたから、そこで剣心に対して好意を持ったのかな?っていう流れもあった。
そういった赤べこの従業員の燕や町の人間が、観柳が仕掛けた毒の所為で倒れたので、剣心と一緒に戦いに…とはいえ。一介の喧嘩屋が命かけてまで行くの?って言う疑問。
ただ、左之助が醸し出す雰囲気がね、それにちゃんと答えていた感じ。「ああ、この男はこういう事態には後先考えずに行くタイプなんだな」っていう(一応観柳の警備体制は調べているっていう冷静さもある男でもある。抜刀斎のことも調べてるし)。
戦闘中に「参った」と言って相手を油断させたりするシーンがあって、それは原作の左之なら言わなそうだなって思うけれども、「言ってもいいかな」って思える、そんな左之になってました。
服装もね。原作に忠実で漫画・アニメ感があるんだけれど、何故か次第に馴染んていくっていう不思議さ。

外印に関しては完全に別人だったんで、外印って名前にしないでオリジナルキャラで良かったんじゃないかな。キャラとしては好きです。

斉藤も「ふざけんじゃねえぞ」なんて言うキャラじゃないし。もっと冷徹さが欲しかったな。そもそも江口さんが演じると、全員良い人に見えてしまうという(苦笑)
ガトリングガンの時に、剣心と左之を囮にさせたところは、斉藤っぽかったです。

ちなみに、最も原作と似ていたのは署長でした(笑)

刃衛も原作よりも渋いキャラになってましたが、これはこれで良かった。
ビジュアルも完璧です。
ただ、一番残念だったのが刃衛の自害シーン。
分かりにくい!!!!(苦笑)
剣心に攻撃したのか自分に刺したのか(苦)
あれはもう少しタメようよ。構図も、もう少し違うのがあったんじゃ。あれだと何で刃衛が自害しなきゃいけないのか、その覚悟とか、心情の動きも分かりづらい。

「人斬りは所詮人斬り」のセリフは最高に恰好よかったですよ。
観柳が完全な悪に対して、刃衛がそれとは違う存在っていうのがよく表れていた。

もう一つ引っかかったシーンは弥彦が、士族を馬鹿にした観柳に反論しなかったシーン。
あれは何で?ここも勿体なかったな。

恵が「厠は?」って聞いたときに弥彦が「あっち」ってすぐ答えるシーンは良かった。
普通なら「え?何で?」ってごたごたするところだけど。恵が追われていることを知っていたのと、武士の家に育った弥彦だから恵の言い方で只事じゃないことを瞬時に察した感じが出てた。

殺陣については「速すぎて見えない」という感想を事前に見て、「だってそれが売りじゃないか」と心の中で反論してたんですけど。
うん、そうですね。確かに速い、速過ぎる(笑)納得です。
後半は剣心が赤い着物着てるから剣心がどこにいるのかまだ分かるものの、抜刀斎時代の殺陣は「え?剣心どこ?」ってくらい速かった。
原作設定では「神速」だからこれで合ってるんですけどね。でもこれだけ速いとは…。迫力ありました。刀を交えるシーンも「切り合い」では無く「殺し合い」にちゃんとなってました。
相手を殺すことを目的に向かってるから、刀だけじゃなくて、足払いとかそういう体術も交えてた。

緊迫したシーンが多い中、ガトリングガンのシーンで、左之と剣心が囮になるところは面白かった。両手上げて壁からちょこんと顔出す剣心が可愛すぎる(2回目)。

原作よりも良かったシーンは(多分無かったと思う)、剣心が逆刃刀で相手の刀を受けた時に、逆刃で肩を傷つけてしまうシーン。相手を殺しはしないが、自分を傷つけることになってしまう逆刃。自分を守ることができない刀。
映画のテーマがそこに集約されてた気がする。

普通の剣士なら、巨大な相手に立ち向かって倒す、で十分。
でも剣心には「“人斬り抜刀斎”と“剣心”との戦い」というもう一つの戦いがあるんだよね。それが無いと「るろうに剣心」じゃない。
刃衛から薫を救った剣心が石段を昇りながら、表情は暗くて、BGMも哀しげ。
このシーン見て、この作品を作った人はるろ剣のことよく分かっていらっしゃると思いました。

そして最後のシーン。ちゃっかり居ついている左之助
この映画で一番期待を乗り越えたのは左之助かな。「左之助!」っていう雰囲気が滲み出てるんですよ。凄い。
原作にある、月岡津南との赤報隊エピソードで、剣心と左之がもう一度戦うシーン。あの実写を是非観たいと思ったくらいに嵌ってました。
左之助がとにかく魅力的なキャラになってました。

あと、ジブリ細田守作品でもそうなんだけど、食事のシーンがあるといいね。
るろ剣でも、食事の準備したり牛鍋つつくシーンがあって。ラストも恵と弥彦で料理して剣心が買い物に行ってて。

何ていうか…スタッフ、キャストの方お疲れ様でした。
実写化する必要が無いといえば、無いんだけどさ(身もふたもありませんけども)。まあ、これがキッカケで和月が再びるろ剣描いてくれたし。

どのコスプレさんよりも剣心だったよ、佐藤さんの剣心は。
原作で「神速」と表現された剣心のスピード感、身のこなしも実写で観れたし、鬼気迫る殺陣は評判以上でした。

これだけは言える。実写化したのが大友監督で良かった。このキャストで良かった。
良いもの見させていただきました。ありがとう。