映画「すずめの戸締まり」

映画「すずめの戸締まり」観てきました。良かったです。

 

個人的にはオススメ映画ですが、震災のことが割としっかり絡んでるし(津波はない)、地震警報も結構鳴るのでそれにトラウマある人は気をつけた方がいいと思います。

 

 

以下、ネタバレ感想です。

 

新海誠監督作品は、「言の葉の庭」「君の名は。」「天気の子」しか観ていませんが、その中でも良かったです。

一番整合性があったし、個人的に今の自分の年齢から見ても「すずめ~」は感情移入しやすかったのかも。

 

日常からの異界の話。エンターテイメントとしてもしっかりしている。

そこには先人たちの作品、特にジブリ作品(そのネタが作中にも出てきますが)を彷彿とさせるものもありますが、オリジナリティのある素敵な作品だと思いました。

 

この映画は2011年の東日本大震災がストーリーに大きく関わっているだけではなくて、現在進行形の地震発生についても描かれているところが他の作品と違う点です。

 

思えば君の名はも震災を意識した映画で、天気の子も雨という天災。

地球のそういった自然の驚異に、日本古来の伝承や時空を超える何か、そして男女の赤い糸。

どっちかといえば3つ目は薄くて、家族の関係性とか、主人公のすずめ自身の成長が描かれている作品でした。

大学生の草太への思慕はあるだろうけど恋とも愛ともつかない友愛のようなものでお話が締めくくられてたのもよかったな。

 

映画館ではパンフレットばりのしっかりした設定書をいただけました。

自分が思っていたこととそんなに離れていない内容でした。

 

君の名は、天気の子で「ご都合主義やしないか?」ってところが「すずめの戸締まり」では大分解消されていてそこがすごく良かったです。

・スズメ(鈴芽)が家を離れて草太と旅するんですが、お金の心配(電子マネー決済)をしていること、自分がどこにいるかスマホで現在位置確認、椅子になった草太が周りからおかしな目で観られる事の自覚と対策ができてる、SNSで状況確認。

保護者である叔母からしょっちゅう連絡が来るし、叔母も追いかけてくる。GPS設定していないが電子マネーの支払い形跡から居場所特定という現代らしい解決方法。

・冒険物によくありがちな「親は放任主義だからOKという設定」「親が心配している描写はちょっと描くか、無かったことにする」が多い中で、すずめ~ではしっかりと保護者の行動も描いていてよかったです。

・閉じ師である草太が大学生で、教師免許取ろうとしているシーン。閉じ師じゃ明らかにお金食べれないだろうから、正職員か非常勤になりつつ閉じ師もやるっていうのは説得力あるなぁって思いました。もちろん、教師は激務だからその合間に閉じ師はできるのかという疑問もありますけど。

スマホの充電シーン。充電コード持ち歩いてたんかい、というツッコミも考えましたが、もしかしたらコンビニで購入した説もあるか、と。

・革靴で走り回ったら靴ズレする描写。細かい!細かいぜ。犬夜叉とかでかごめがミニスカートや革靴で走り回ってるのにそういうの描かれないし、そういうものなんですけど、ちゃんとそこ描いたのがすごいと思いました。

・ラストシーン。常世で出会ったのは草太だったのか…というところで「あ、そうだったのか」っていうのがね。

多分だけど、君の名はの時だったら草太を出したと思うんですよ。

でも「今」の深海監督だからあのシーンは鈴芽だったんだなぁって思います。

・ストレートな震災描写。匂わすとかそういうレベルじゃなくて、がっつり描いたこと。被災者の悲しみ、孤児を受け入れる親族の率直な思い。綺麗事だけじゃない描き方がよかったです。

・声優陣が抜群にいい。この人が本職声優ではないと!?という驚きの連続です。違和感ないです。すげえって思いました。神木さんは自分の中では声優さんなので、それは置いといて、ヒロインの原さんやアイドルの松村さんが上手すぎです。特に草太はほぼ椅子なので、動画補正がないんですよね。椅子の動きもありますが、声だけで感情を伝えるシーンが多いのにそれがしっかり伝わってる。

ホリックでの演技も良かったですが、松村さん、声優の方が向いてるんじゃ…。

・ラストシーンは泣きそうになりました。お母さん連発とか震災前の日常とか、来ますね。これは来るね。

地震起こしているミミズの描写良かったです。もののけ姫デイダラボッチみたいでした。普通の人には見えないけど常世に触れたことのある鈴芽や閉じ師には見えるんですね。

戸を締めるときの「掛けまくも畏み…」という祓詞と、「お返し申す」「お返しします」の言葉がとても好きでした。

・設定書で監督が話していた「人の葬式はあっても土地の葬式はない」みたいな言葉が印象に残りました。

人から忘れ去られた廃墟、廃屋。それらにはまだ人の心や思い出が残っていて浮かばれてないものも多いかもしれない。そういうところに天災の戸が開けやすいのか。そもそも「戸」は人が作ったものだから、人がいるところにミミズは出てくるんですよね。

・おそらく右大臣であるダイジンが小さくて、左大臣が大きく立派に描かれてたこと。左大臣の方が位が高いので。

・ダイジンたちももしかしたら昔は人だったのかもしれないし土地の精霊だったのかもしれないなと思いました。それで不意に鈴芽によって自由にしてもらえて、ダイジンは嬉しかったんだろうなと思います。鈴芽がダイジンを拒絶するシーンは結構怖かったです。

・震災を経験した鈴芽、古くからの家業を継ぎ常世も見てきた草太。どちらも死に対しての恐れはあまりないように描かれてましたが、終盤で「死ぬのは怖い」「生きたい」とまっすぐに生にしがみつくところが良かったです。

・新海監督と言えばRADWIMPS。それが今回は抑え目で、歌で映画を語ることが少なくストーリーやキャラクターの言葉で映画を作っていたのが印象的でした。

・背景の描き方。写真のような美しさ、と評されることが多い新海作品。それが今回はちょっと変化が。アナログっぽい塗り方もありつつ写真みたいな綺麗さもあり、ちょうどいい塩梅でした。