映画感想「ミッドウェイ」

映画「ミッドウェイ」を観てきました。

良かったです。

観に行っておいてなんだけども、戦争映画は少し苦手だし洋画だと派手にドンパチするから大丈夫かと思ったら戦闘シーンは割と「アクション」的要素が強めだったのと、基本的には頭脳戦が主軸だったので色々と意外でした。

 

1941年12月7日の真珠湾攻撃から、1942年6月5日(日本時間)のミッドウェイ海戦を描いた映画です。

映画「パールハーバー」に比べたら、かなり日本の事情も描いてくれていて、割と公平視点に基づいた映画だと思います。

 

そりゃツッコミどころもありますけど。

・石油輸出停止の部分はもう少し描いて欲しかった。アメリカは中立を保っていた、というのには「ん?」とはなった。

・突然の中国人シーン。中国人を日本軍が狙撃するシーンあったけど、アメリカも機銃掃射を日本人、しかも子供にもやってるよね。そこ強調されてもな、と思った。

・1回目の日本の本土空襲。軍施設だけではなくて民間人も被害にあってることは描いて欲しかった。

 

大まかにこの3点かな。それ以外は「かなり日本のこと勉強した人が撮ってる」と思いました。まあプロの戦争研究家が観たら違うかもしれないけども。

個人的には、アメリカ映画とか外国の映画で出てくる日本人って、中国とか他のアジアの国とごっちゃになっていて「それは日本の雰囲気とは違う」っていうのが多い。掛け軸の文字とか。

 

でも今回は日本軍側の静かな心理描写とか、動きとか、あと陸軍と海軍のやりとりのリアルさとか、それが良かったと思います。

 

日本の主な役者さんは豊川悦司さん、浅野忠信さん、國村隼さん。

監督にこの3人を紹介した方、GJだと思いました。

日本軍側が喋るときはちゃんと日本語で、当時の軍人の喋り方で、そこだけ英語字幕二なるので、観にくいっちゃ観にくいけど、役者さんの演技が良かったからそこまで気にならない。

 

ミッドウェイ海戦のイメージとしては、日本側が情報的にも物理的にもボロ負けだったというものがありました。

でも実際は、情報戦にしてもアメリカ側は努力していたし(映画で描かれていたあの暗号解読法は技術的なものというよりもセンスなのでは。傍聴に成功してもそれが何を示すかは職員の発想力に委ねられてる)暗号解読しても上層部を納得させなきゃならないっていう。

空母や戦闘機についても、この頃はまだ日本の方が量が上だったみたいで。え、そうなの?日本が無敵って思われてたの?と意外でした。

このミッドウェイを境にして戦況が変わっていったんですね。

 

戦闘シーンは、純粋に格好良かったです。

空でのドッグファイト零戦との対決。

船も戦闘機も、この映画に出てくるものの多くがCGだということに驚きます。

 

海中では潜水艦が。

海上では船と戦闘機。

 

海中、海上、空中。空間全てで行われた激戦。

その名の通り、双方にとって「激戦」だったんだなと思いました。

昔の映像で、日本の船が攻撃されてるのを見ると、一見簡単に爆撃されてるように見えるんですが、急降下時のパイロットへの体の負担、酸素が薄いところまで行くときには酸素吸入が必要(しかも当時は配合がうまく行ってなくて肺をやられるときがある)、単に爆弾を落としても船に当たらないから、ぎりぎりまで船に近づいてから落とすというテクニックが必要。

 

その描写がリアリティあって、また戦争というものの見方が変わってきそう。

 

1回目の日本への空襲については、自分としては民間人まで…と嫌な気持ちになりました。

アメリカ側からしてみれば、この頃はまだ日本まで飛ぶには遠すぎて、行きだけの燃料しかなかったことに自分はびっくりしました。え、そうだったの?と。まあだから日本に近い島を制圧して、そこから飛ぶようにしてたんでしょうけど。

じゃあ片道しか行けないのにどうしてたかというと、日本で爆弾落としてから、中国のどこかに不時着するという作戦(夜の着陸だからそこが中国かどうかもよく分からない)。そんなことがあったんだなと驚きました。

 

で、普通だったらアメリカ勝利で終わるところを、日本軍側の引き際のシーンまでしっかり描いていてそこが一番驚きました。

山口多聞が飛龍と共に沈んでいく。

 

監督はドイツ人。だからこそ描けた作品だったのかと思います。

 

反戦映画でもなく、アメリカ最強映画でもなく、こういう海戦があったんだよということを知れる映画だと思います。

 

反戦をアピールする作品があまり好きではないというのには自分なりに理由があって。

戦国時代や幕末の戦いって、言ってしまえば「内戦」なのに、その戦争を語るときに武将や武士の生き様とか美しいものとして格好良いものとして語るのに、何で近代戦争に限っては「戦争だめ、絶対」になるのか。そこが疑問。だったら全ての戦争ひっくるめて反対すればいいのに、と思ってしまうんです。

人が人を殺す。そのこと自体、嫌なものだけど、互いに承知の上での戦いとか、国を守るために戦った姿というのは思想抜きにしてかっこいいわ。と思いました、この映画。

 

自分勝手な行動してたパイロットが徐々に成長して部下を守りながら戦う姿とかよかったし。

ここから泥沼化していく戦況に悲しさも感じるし。っていうかここから3年、日本はよく戦ったな、って思うし。

アメリカとかが植民地持ってたことについて、植民地があること自体どうなの?とかさ。戦争反対で片付けないで、植民地を日本が制圧して、このあと日本が連合国に負けるんだけど、じゃあその土地は原住民の元に戻ったのか?とか。

色々調べると歴史っておもしろいと思う。