「シャイロックの子供たち」

映画「シャイロックの子供たち」を観てきました。

良かったです。

派手な展開はないけど、地道に積み重ねて、たくさんのキャラクターの人生を無駄にしないような、そういう映画だなと思いました。

 

シャイロックというのはシェイクスピアの「ヴェニスの商人」という作品に出てくる金貸しのことなんですね。

 

その劇中劇から始まるのですが、その劇がすごく陳腐で、衣装は良いのに縁起がだめで。せっかく衣装に凝っているのなら背景のセットも凝ったものにすればいいのにと思いました。

 

それ以外は良かったです。

当たり前ですが下手な演技の人がいないってストレスレスで見れるんですよね。

 

若い役者さんが出ていましたが、どこかで見たことあるなぁって思ったらジャニーズの玉森さんでした。でも演技上手くてアイドルっぽさもなくてすごくよかったです。

上戸さんの演技も久々に見ましたがすごく自然でした。

 

主人公である阿部サダヲさんは流石というか、歩き方とか新聞の持ち方とか、そこだけで「あ、この人はこういうキャラか」と際立つような。

 

この映画は騙し騙され、得と損が入り混じる展開でとても面白かったです。

ネタばらしのあとでもう一度最初から見ると全然見方も変わります。

 

好きなシーンは、些細なところなんですが、上戸さんが内線電話をかけたときにその相手が不在で、代わりに玉森さんが取るんですが「滝野さんが席を外しているので通りがかった田端が取りました」みたいな言い方をするところ。この電話のやりとりが会社としてリアリティあるなぁって思いました。

銀行も窓口と、営業部とそれぞれ部署が違うのでそのあちこちで繰り広げられていることが、関係ないと思っていた人たちにつながっていくのがおもしろいです。

 

一方で切なかったのは遠藤という職員。業績を伸ばすためにプレッシャーをかけられ、途中から笑顔になって先方とのやり取りも順調そうで良かったなぁって思ってたところで、実は幻覚幻聴をみるようになっていて、神社の狛犬を取引先だと思って話しかけていたシーンはぐっと来ました。

 

この映画のひとつのテーマになっているのが「金は返せばいいというものでもない」ということ。それがじわじわ効いてくるのがいい。

 

滝野が刑務所から出てきた時に、奥さんたちが待っていたのはちょっと都合が良すぎだなぁって思ったけど、もしかしたら滝野がちゃんと自白したことで支店長達が捕まったわけだし滝野は特に報酬を得ているわけではないから、もしかしたら世論としても滝野を擁護する方向にあったから奥さんも子供も誇らしげにしていたのかなと思いました。