映画「ロストケア」を観てきました。ミニマムな映画ですがすごく良かったです。
介護殺人の話ですが在宅介護の現場がものすごくリアルに描かれていました。
介護者が動けるからこその生活保護申請が通らないところとか、お金がある人は良い施設に入れるし、在宅でもショートなど使えるけど送迎時に苦労するからやっぱり介護負担が減らないところとか。
ヤングケアの問題もちょっとだけ映ってました。
ロストケア=安楽死のような意味で作中では描かれていました。
どのシーンもよかったんですが、松山ケンイチさんがものすごく美しかった。カッコイイというより美しい人だなと思いました。
(ちなみに若白髪という設定ですが、うちの上司も同じようなビジュアルなのでその点でもめちゃくちゃリアルでした)
要介護者役の一人に柄本明さんがいらっしゃるんですが、脳梗塞右麻痺で徐々に認知症が進んでいく演技がめちゃくちゃ上手でした。構音障害のところとか顔面の筋肉の動かし方とか、不穏時の様子とか。すごすぎました。
ただ最近の邦画の老年役って柄本明さんが何回も出ているので、この名優さん以外に役者さんはいないのか、頼り過ぎてないかと心配になりました。
あと鎌倉殿で出ていた善児役の方が出ていて、いいキャラしていました。
どのシーンもよかったですが最後の裁判のシーンで犯人が自分の主張を述べるんですがそれに対して検事は無言で見つめている。そこがよかったです。裁く側だけど被害者ではない検事。代わりに遺族の一人が声を上げます。そこがね、ぐっときました。
犯人の主張も検事の主張もどちらも正しいと思います。
綺麗事では済まない現実。介護保険でも救いきれない介護の現場。でも殺人を肯定するわけには行かない立場。
エンドクレジットでは森山直太朗さんの「さもありなん」が優しく寄り添うように流れて映画は終わりました。邦画で、主題歌がしっかりハマってるのは久しぶりです。本当に素敵な曲でした。