映画「首」

映画「首」観てきました。

事前情報として、予告にあるようなシリアスな戦国時代ものではなくてコメディ多めだよという感想が多かったり、行列の出来る相談所で「首」特集になったときにアドリブシーンが現代語でしかも面白くないコントやってたので、期待せずに行きました。

 

が。

 

しっかりグロかったしシリアスでしたよ!(苦笑)

開始5分か10分くらいかな。予告でも流れていた、信長が刀に餅差して荒木村重に食べさせるシーンで、うわーっときて、その後に村重が戦から逃げたあとに一族皆殺しにされる処刑のシーンが想像以上にきつくて席を立ちました。

全身の血が抜けていく感じ。

そのあとは、通路の端に座ってしばらく観て、一番前の席で映画を観ました。

 

その処刑のシーン。男性も女性も首を落とされ、そのあとで体も穴に落とされる惨たらしいシーンなんですが、一般的な時代劇だと、落とす瞬間は撮影していないんですよ。これはしてるんです。どうやって撮ってるんだ?って思うくらい自然に首を落としています。CG使ってるんでしょうが、あまりにもリアルで、きつかった。このシーンは目を閉じてたので、もう一回映画観に行こうと思ってます。なんか、聞くところによると北の作品って配信されない映画もあるそうなので。DVDの販売やレンタルはあると思うので、最悪それに賭けようと思いますけどね。

 

北野作品にイメージする静の描写は少なかったですが、個人的にはとても楽しめました。

 

予告ではまるで本能寺の変がクライマックスみたいに流れてますが、実際はあれは通過点に過ぎず、光秀が討たれる山崎の戦いまで描かれます。大河ドラマ麒麟がくる」や「どうする家康」が記憶に新しいですが、今回の映画では中国大返しの秀吉や家臣らのリアルな戻ってくる様子とか(マラソンみたい)、山崎の戦いの光秀が討たれる経過やその後の首実検もしっかり描いていて良かったなと思います。

 

尾張言葉の信長よかった。どうしても最近の信長はどっしりした武将で描かれますが、一周回って、方言使いまくりのパワハラ信長は新しい人物像です。逆に今この信長を脚本に書く人いないと思う。レジェンドアンドバタフライや麒麟がくる、どうする家康の信長も勿論好きですが、この信長も好きです。光秀の解釈としてはレジェバタの光秀に近い物があるし、信長と光秀の関係は麒麟に近いものがあると思います。

 

何よりも今回は男色、衆道の世界が日常として描かれているので、時代劇として欠かせないというか。人物達の行動原理のひとつに、お家を守るとか天下を取るとか以外に、色恋沙汰も関係してくるとすごく納得できる物があるんですよね。っていうかそれが自然なんじゃないかと思うんです。人として好きかどうか、男性として好きかどうか、それが原因で行動しててもおかしくないのではと。

 

ざっくり言うと、信長・光秀・村重の三角関係っぽさが軸にありつつの、そこに秀吉がうまく掌で転がそうと甲賀忍者と手を組んだり家康に泣きついてみたり、そんな話です。

 

秀吉は百姓あがりという設定なので、武将達の男色の趣味には興味なかったり、首の大切さとか切腹の作法の重要さとか頓着しないというのもおもしろかったかな。

 

落ち着いて考えてみると結構面白いところがあるんですが、如何せん最初の処刑シーンのえぐさが衝撃で、うろ覚えです。

加瀬亮さんの演技を久々に観れたのが嬉しかったな。木村祐一さんの役が実在した人だと知って驚きました。

 

そうそう、本能寺の変で信長が蘭丸の介錯をしてあげるんですが、あそこのキスシーンよかった。村重とのキスもよかったですけど。

そして信長の首を落としたのがまさかの弥助という。首を持ち去ったという逸話があるので、そこから着想を得たんでしょうが、ほんとに誰もやったことのない本能寺の変だし、どろどろした戦国時代を観れたって感じです。

 

やっぱりみんな戦をやってるから、ドラマで描かれるような性格の良さを語られてもやってることと整合性が取れないんですよね。だからこういう身も蓋もない時代劇があってもいいなと思うし、ちゃんと男色を武士のたしなみとしてあったことをぼかさずに描く時代劇があってよかったと思います。

北野さんって、そういうのに理解薄そうというイメージがあるので「こんなにちゃんと描いてくれるんだ」という驚きもありました。

 

あと戦のシーンも見応えありましたよ。あの馬たち頑張ったなって思う。

接近戦のむごさとか、仲間の死体の首を切り取って騎馬隊長の首だと偽造しようとする茂助とか。民衆=無辜、ではないこともちゃんと描いてて。実際にあったらしいですね、偽造首。

 

絶対に地上派で流せない映画なので、なんとかして頑張ってもう一回映画館に行くのをチャレンジしたいと思います。