今年ラストの映画

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」

ネタバレありの感想。

 

良かったです。

筋ジスと診断された10代の少年が40代まで生きた実話。

映画は両下肢が動かず、首と手先がわずかに動く状態で電動車いすに乗っている時期から始まります。

多分、この時代は介護保険制度が始まる前か、訪問リハビリも訪問看護も充実していなかった時代なのかな。

主人公の両親は健在だけど、親には介護人生を送らせたくない。

自立生活(ニュアンス的には自律かな)を目指して、大勢のボランティアがシフトを組んで24時間介護するという体制で過ごす。

主人公の鹿野さんは言いたいこと言うし、我儘も言うけど、ボランティア一人一人をちゃんと見ているし悩み事も真剣に聴く。

性格の良い人では決してないけど、明るく前向きで、人を惹きつける人間性の方だなと思いました。

 

障害を持っている人=障害を負ったからこそ心優しい、前向き、という聖人みたいな扱いされることがある印象なんですが、この映画に出てくる鹿野さんはそんなこともなく。

「自分の家なんだから遠慮するのは変」とかボランティアを勝手に辞められたときには「筋ジスなめんじゃねえ!」と怒ったり、心に残る台詞がありました。

 

映画の途中で親が出てきたときには、何で親が健在なのに親は介護に来ないんだろう?と思ってしまいました。

でも、親や家族が介護しなければならないなんてことは無いんですよね。

ボランティアでも何でも他人に介護してもらったっていい。

先のことを考えたら、親に何かあるかもしれないからヘルプ先は色んなところにあったほうがいいんですよね。

 

人工呼吸器を付けて話すことが出来なくなっても、リスクを冒してまで発声を試みるところは、正直危なかっしくて見てられませんでしたが、話せなくて病院で管理しながら生きる人生と、自分で責任持って命を短くしてもやりたいことやりきる人生では、後者だと思いました。

ボランティアの人たちも口だけじゃなくて、吸引研修を受けた上で在宅を目指しますし。

 

筋ジス患者を演じる大泉さんが上手すぎて、弛緩した筋肉とか転び方とかリアルで、演技と思えないほどでした。

 

スタッフロールで、実際の鹿野さんの映像が出てきます。

その晴れやかな笑顔が眩しかったです。

 

お酒飲んで、野外ライブに行って、カラオケ行って、旅行に行って、やりたいことをやる。自分だけで無理なら助けを呼ぶ勇気も必要。

 

迷惑をかけないことが自分としては美徳だと思っていましたが、必ずしもそうではないなとも思いました。